BLOGTachibana の日記

寅草紙〜とらそうし〜 其の四

2022.8.4

この寅草紙では、「寅印(とらじるし)」についての想いや取り組みを綴ります。

寅印とは、原料となる楮(こうぞ)の栽培から紙漉きまでを、当工房で一貫して行っているオリジナルブランドです。

 

【カズふかし】

和紙産地に共通のこととして、楮のことを「カズ」と呼ぶ、というのがあります。

「カジノキ」が語源だとか、紐解けば色々あるようですが。

「カズふかし」というのは当地での工程名です。標準語的に言い換えると「カズむき」でしょうか。これは産地によって様々な呼び方があるようです。

切り揃えた楮の束を釜に入れ、下1/4くらいはお湯に浸かった状態で、上部は覆いを被せて蒸します。これは当工房の昔からのやり方。

 

 

勢いよく蒸気が上がる事を「息がかえる」と祖父も父も言っていました。

息がかえってから1時間以上蒸します。辺りにはお芋を蒸すような甘い香りが漂います。

 

良く蒸されると皮は収縮を起こし、芯の木質部とズレが生じ、木質部の卵色が見えるようになります。これが蒸し上がりの合図。蒸すことで皮離れが良くなるのです。

良く蒸せたら釜から出して熱いうちに即座に1本1本剥いていきます。このように、蒸すのと剥くのがセットなので、剥くところまで含めて「カズふかし」というわけ。

卵色の木質部の方が目を引きますが、和紙になるのは皮の方。木質部の方は「カズっから」といって、当工房では薪(焚き付け)に使います。

蒸し上がった楮は全て釜から出し、次の楮原木を入れまた蒸す。次の釜が蒸し上がるまでに1釜分剥き終わらせる…

今は少量なので、釜にゆるゆるに入れて2回蒸せば終わりですが、私が手伝い始めた頃は、パンパンに入れて1日5回、それを2日半位やっていました。

 

剥いた皮は一掴みずつ束ねます。一掴みの中の1本を使い、ぐるぐると巻いて束にするのです。

それを竿にかけて乾かします。

こうして出来上がったものを黒皮といいます。

しっかりと乾燥させ、一時保存します。

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