BLOGTachibana の日記

民藝館のこと

2022.12.26

昨年、15年振りに日本民藝館公募展に出品し、そして今年も出品、2年連続での入選となりました。

 

駆け出しの頃、父に倣い、民藝館展に出品するようになりました。連続で7回程出品したでしょうか。

その当時は父が未晒の紙を漉いていたので、私が色柄物担当というのが自然の流れでした。未晒の紙は注文生産のものが多く、また、シンプルなだけに粗も目立つ─。そんなことから、駆け出しの私にはお鉢が回ってこなかった、というわけです。

民藝館展には、父が未晒の紙を、私は自分で漉いた色柄物の紙を出品していました。

当初は紙のサイズこそ小さかったものの、紅花染や黄檗染、紅花漉き込み紙(紅花の花びらを混ぜ入れた紙)などを出品しており、入選させていただいておりました。

何年かするうち、サイズの大きい紙を漉くようになり、また、工芸紙といって型紙を使用して作る透かしや、簀の上に染色した紙料を流し入れ模様を付ける漉き模様など、作る紙が複雑化していきました。すると次第に準入選になるものが出てきたり、選外になることもありました。手慣れてきて、色や模様で表現することがますます面白くなっていった時期であったと思います。

出来上がる紙質が必要以上に落ちないようにと考え、天然染料に拘らず化学染料を多用するようにもなりました。

民藝館展での評価は反比例するかのように下がっていると感じました。

また、ちょうど出産、子育てが始まった時期とも重なりました。

自分の追い求めている紙は、民藝館で求められているそれとは違うらしい─。そのような考えに至り、民藝館展への出品をやめました。

 

3年くらい前、自家栽培楮が軌道に乗り始めた頃、ある方から「最近は民藝館には出さないのですか」と言われました。

実はその時、民藝館のことはすっかり忘れていました。

もちろん民藝館の存在も、公募展のことも忘れていたわけではありません。「自分が民藝館展に出すかどうか」ということを忘れていたのです。

その時は「考えていない」というような返事をとっさにしてしまったのですが、それをきっかけに再び民藝館展のことを思うようになりました。ちょうど自家栽培楮の紙が順調に作れるようになってきたこともあり、「今こそ民藝館かも」、素直にそう思いました。

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今年初めて、民藝館展の講評会に出席させていただきました。

講評会では、審査員の先生方の、それぞれの出品作を前にしてのコメントを、皆でじっくり聴いていました。メモを取る人や自分の品物への評価を質問する人など、それぞれの熱量を感じました。とても暖かい空気に包まれている感覚でした。物を作ることに真摯に向き合っている方々のお話に耳を傾けることが出来、とても有意義な時間となりました。

中でも佐藤先生の「私たちは物を作っているというよりことを行っている、と思う」というお言葉が印象的でした。

評価についても、以前出品していた頃よりスッと腑に落ちるような感覚が得られたように思います。講評会に出席し、直接お話を聞けたというのが何より大きいかもしれませんが。

物を見るだけでなく、人と会って話すことで確かめる。直接対面して話すことの大切さを実感しました。

そんなこともあり、自分の成長も少し感じられた一日となりました。

民藝館展は、物の見方や自分の仕事への向き合い方を見つめ直し、今の自分の位置を確かめる道標のような場所─。

そのような場所へ参加できることの有り難みを感じつつ、また続けて出品できるよう努めたいと思います。

 

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