BLOGTachibana の日記
寅草紙〜とらそうし〜 其の弐
2022.5.15この寅草紙では、「寅印(とらじるし)」についての想いや取り組みを綴ります。
寅印とは、原料となる楮(こうぞ)の栽培から紙漉きまでを、当工房で一貫して行っているオリジナルブランドです。
【楮の栽培】
楮は桑科の落葉低木で、和紙原料としては1年目の物を使います。
春、前年収穫後の切り株となっているところから芽を出します。
画像は5月下旬頃。
芽数がたくさん出ますから、間引きをします。とても丈夫な植物で、後から後から芽が出てきます。後々の作業を考えると、一本一本をある程度太くしたいので、生長を見ながら何度も間引きします。
ここで注意したいのが、シカの食害。この頃の、青々とした、そして柔らかい新芽(葉っぱ)をシカが好んで食べてしまいます。
そこで欠かせないのが網囲い。跳躍力のあるシカでも跳び越せないほどの高さが必要となります。
最近ではシカも人間に慣れて警戒心が薄れているようで、間近に見られるようになってしまいました。
共存するにはどうしたらいいか、知恵を働かせなくてはなりません。
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梅雨時、楮は脇芽をたくさん出します。
和紙原料として楮を栽培するときに重要なのが、なるべく枝が出ないようにすること。
楮の皮の部分が和紙になるわけなので、皮を剥いだり、その後の処理のしやすさのために、なるべく枝分かれのない一本の状態に仕立てたいのです。それを実現するために行うのが芽かき。
6月に入ると、まだ背丈の小さい頃から脇芽が出始めます。10センチ程度の長さの脇芽はまだ柔らかく、手で簡単に折れるので、毎週畑に入って芽かきをします。
6月から7月にかけて楮はぐんぐん生長し、いつしか私の頭を越していきます。
小さいうちから芽かきで脇芽を取り除いていくので、楮も負けじと次から次へと脇芽を出してきます。ここで諦めることなく、マメに畑に入って脇芽をポキポキ…
これを、手の届かない高さまで続けると、ざっと2m弱は枝のない部分が取れるというわけ。
また、8月に入ると注意したいのがつる性の草。つるが楮に巻きついて伸び、その後楮が太っていくときに縛り付けてしまいます。せっかくの楮にキズが付いてしまい、原料となる皮の部分には茶色く固いキズが残ってしまいます。後々の処理に手間がかかりすぎないようにするためにも、栽培に手間を惜しまないことが大切です。