BLOGTachibana の日記

梅雨の晴れ間に

2021.7.5

梅雨空の合間を縫って、楮畑に繰り出します。

和紙になるのは楮の木の皮の部分。後々の作業がしやすいように(皮を剥がしやすいように)出来るだけ1本の、枝分かれのない状態に育てたい。

そこで重要になるのがこの時期に行う〝芽かき〟。緑色のうちは柔らかく、簡単に折り取ることができます。マメにこれをやっておくと、いい原木に育ちます。

6月から7月にかけてグングン育つので、芽かきをすればするほど脇芽もどんどん出てきます。7月下旬、自分の手が届かなくなるまで続けていれば、約2メートルは使える部分になるというわけ。

ーーーーーーー

父が専業として工房を立ち上げた時は、楮畑はありませんでした。(裏山にあったようですが、当時から鹿の食害があったらしく、私はその事実を最近まで知りませんでした。)

縁あって父が知人から原木を分けてもらえるようになり、原料屋さんから購入する白皮と、原木から作る地元産楮の2本立てで仕事をしていました。

ですがその知人も高齢ゆえ、次第に手入れが悪くなってしまった様で、私が手伝い始めた頃には、絡み付いた雑草の蔓を取り除いたり、鉈で枝を落としたり(芽かきをしていないため枝が出放題の原木でした)とても手間のかかる状態でした。

私がこの仕事をするようになって10年ほど経った頃、父も高齢になってきて地元産楮を諦めようということになりました。

ですが私はその後も、地元産楮のことが頭から離れませんでした。

さらに10年くらい経ったある時、ひょんな事からその話が持ち出されました。日頃から当工房を応援して下さる方も口添えしてくださり、何とか父を説得。欲張らずほんの少量だけ、自分達の手に負える範囲でなら‥‥‥。3年に一度くらい紙が漉ける程度でもいいのではないかと。

工房敷地内の小さな畑に、数株の楮が残っていたので、挿し木して増やそう、次の秋が来たらやり方を教えるよ…。そんな風に話していたのが5月頃。ですがその夏、父は突然この世を去りました。

 

それから5年。

そんな訳で、実は楮栽培についてはよく知らないまま、見よう見まねでやってきましたが、年々手応えを感じています。

カズ蒸かし(楮のことをカズと言います。楮の皮を剥ぐ作業のこと)の経験は充分にあるので、何しろ皮(木の肌)を大事にして育てる、そして枝が無い方がいいとはわかっていましたから、後々の作業のことをイメージしながら原木栽培に取り組んできました。

少量であれば手入れが行き届く。手入れが上手くいけば収量も上がり、作業効率が良くなる。それが品質管理にもつながり、良い製品が出来上がる。‥‥‥そんな良い循環が出来てきました。3年に一度どころか、ちゃんと毎年紙になっています。

楮の原木だけでなく、自分の労力に合った量を確実にこなしていく。当たり前のことですが、一人での作業になってからはやっと最近、自分のペースが出来てきた様に思います。

またこれからも、すくすく育つ楮とともに。

 

TOP