BLOGTachibana の日記

工芸紙のこと

2023.4.28

ここ数年、この時期に工芸紙を漉いています。

寒漉きを終え、しかしまだまだトロも効くので、一枚一枚を時間をかけて漉く工芸紙は4月頃の仕事に最適です。

 

工芸紙とは、様々な技法を用いて作る模様などの紙のことです。

写真は工芸紙の中でも漉き模様というものです。染色した紙料を水に解き、水ごと漉き具の上に垂らします。フリーハンドで垂らすので、模様も大きかったり小さかったり、濃く入ったり薄くなったり。ひとつとして同じ模様は出来ないとも言えますが、これを大体「同じような」感じになるよう作ります。紙という素材として、バラついていては使いにくい場合もありますから。

漉き具の上に模様を垂らした後、紙を漉きます。漉き上がったものを重ねて置く時、無地などの紙は直接重ねますが、この技法の場合、ベースの白い繊維と模様の青などの繊維は絡み合っていないので、直接重ねると隣り合った紙に模様が持っていかれたりして型崩れの原因となるので、必ず間に布を挟みます。

布を置くときも、シワにならないよう、空気が入らないよう、などの注意が必要です。

 

そもそも自分は仕事が速い方ではないのですが、このような紙だとますます時間がかかります。あまり沢山は作れませんが、様々の、色や模様を考えてひとつひとつ、きれいな模様をつけていくのはとても楽しいもの。しばらく工芸紙に取り組み、また未晒の紙作りに戻ると改めて無地の、基本の未晒の良さを噛み締めたり。

一年を通じて紙に携わるとき、この時期のこの仕事、とか、この作業工程とか、毎年繰り返されているようでいて、ちょっとずつ違っていたりと、ものづくりの楽しさ奥深さを感じずにはいられません。

年々一年が早く感じられるのは、歳のせいだけではないのだと、自分に言い聞かせます。

 

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